手紙

そよ風がレースのカーテンを揺らす。窓の外には絶景が広がっている。

白い砂浜に青い海、その上にまた青い空。

カモメが太陽を背に受けて海に影を落としている。

赤や黄のパラソルがまばらに砂浜に刺さっている。だが人はいない。この世界には人はいない。観察者である僕自身もそこにはいないのである。

僕は東京、目黒のあるマンションにいる。

部屋の電気はついてない。薄暗い部屋。東京特有の曇り空からわずかに差す日光が僕の部屋にまで届いている。

あの日あの人からの手紙を読んだ。抑揚のない文章、しかし、ときどきわざとらしい強い言葉が使われていた。なんだかこの部屋の外の室外機の音のようだった。

そのあと僕は抗鬱薬を飲んだ。それから3日間僕はベッドから動けていない。

そういえば、手紙はザラザラとした感触だった。もしかするとあの手紙には麻薬のようなものが付着していて、それを触った手で抗鬱薬を飲んで……こうなってしまったのだろうか。

海が見える。誰もいない海。そういえば手紙の消印がなぜか8月だった。

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