クラゲ
触手が数本、千切れた。 痛みはなかった。ただ、泳げなくなった。私は深海へ沈んでいった。 暗い。暗いのに、身体の輪郭はどこまでも広がっていく気がした。水と皮膚の境界が溶けて、自分が深海の一部になっていくような。あるいは自分自身が深海であるような。 なのに、思考だけがくっきりと残っていた。 考えが、ぐるぐると回った。小さく、個人的な考えが。誰も知らない、誰にも届かない考えが。身体はどこまでも広がっているのに、思考だけがここに残っている。世界に取り残された思考だけが。 苦しかった。 もう、終わりにしたいと思ったとき、大きな口が現れた。 一瞬だった。 暗闇の中に、もっと深い暗闇が開いて、自分はその中に収まった。輪郭も、思考も、全部まとめて。 ああ、と思った。 ようやく、終わったと思った。