自販機

自販機の前に立っている。

暗がりの片隅を、ぼんやりと照らすその光。

ジー……という稼働音だけが響く、ほとんど無音の空間。

ここは、深夜の病院だ。

二時間ほど前まで、右耳の激痛にのたうち回っていた。

ようやくの思いで救急外来に辿り着き、診察を受けると、耳の奥に膿が溜まっていたらしい。

それを抜いてもらい、鎮痛剤も処方された。

今は、嘘のように痛みが和らいでいる。

夜の病院でも、自販機は眠らない。

時折、患者が光に吸い寄せられる蛾のように現れては、ガシャンと音を立てて飲み物を買い、

そしてまた、闇の中へと消えていく。

だいぶ疲れていた。

眠気覚ましにアイスコーヒーを飲もうと、ボタンに手を伸ばしたとき、

その横に、妙な商品があることに気づいた。

缶に混じって、絆創膏が並んでいる。

値段は10円。

何の変哲もない、どこにでもありそうな普通の絆創膏が、

飲み物と同じ掲示トレーに収まっていた。

少しだけ興味が湧き、

気づいたときには、10円玉を投入口に落としていた。

パサ……と、

絆創膏が一枚、静かに落ちてくる。

好奇心で、眠気はすっかり吹き飛んでいた。

居ても立ってもいられず、体中の傷を探している自分に気づく。

手の甲に、かろうじて、少しだけかさぶたがあった。

ジー……ガコン。

自販機の音が、静かに夜に溶ける。

絆創膏を貼った手の甲は、じんわりと温かい。

まるで、誰かにそっと護られているような気分だった。

きっと皆、

この温かみを求めて、ここで立ち止まるのだろう。

孤独な夜の病院で、

ここだけが、太陽に照らされているかのようだった。

そこで、ふと気づく。

絆創膏の値段の下に、小さく、

「あったか〜い」

と書かれていることに。

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