船に密航する。 真っ暗な海原にぼうっと浮かび上がる巨大な山のような船、それがセントマレー号だ。 影の国の使者たちが実体もなく動かしているその船は、まさに幽霊船だった。 対して、私たち二人のボートは小さな波しぶきひとつで転覆しそうだ。 ネズミのペロウが言う。 「船の設計図どおりなら、吸水口から中に入れるはず」 「中で二手に分かれるんだ。僕を信じて!」 ペロウのまん丸な瞳に、不安そうな私の顔が映っている。 ついに巨大船の横にまで寄せると、すごい引き波で倒れそうになる。 そのとき船はものすごい音を立てながら、ゆっくりとカーブし始めた。 「いけない!」 波から波が生じ、ボートは激しく揺れて転覆した。 ペロウの手をつなぎ止めたまま、私たちは海へ投げ出された。 二人とも少し流されたボートのオールに必死で捕まろうとするが上手く掴めない。 波にもみくちゃにされ、ついにペロウと手が離れてしまう。 私は水を飲み込みながら叫んだ。 「信じる!」 ペロウは海の底へ沈んでいった。 私は船の給水口に吸い込まれていった。 気がつくと、薄暗い部屋の中で私は横になっていた。 誰かの 「おやおや、大変なことだ、大変なことだ」 という声で目が覚めた。 そこには三角形の顔をした痩せたカマキリのおじさんがいて、古い救護セットのようなものを手のカマで開けようとしている。 「おや、気がついたかい? 手がこれなもんでねえ、開かなくてねえ」 私ははっとした。 「ペロウは? ネズミの男の子は?」 「知らないねえ。でも、あなたが無事で良かった」 私は大声で泣いた。