脳石
脳石という巨石がその山にはあった。
村の者はそこを通ると決まって手を合わせた。そこにはまだ信仰があった。
村は時代の波に飲まれていた。そして持ち上がったダム建設計画。その村の者には立ち退きをお願いし街を潤す巨大なダムをそこに作るという計画だった。
だが、村の者は身寄りのない者も多く、また多くは老体だったため猛烈に反対していた。
ある老人が脳石の前を通るとき、世間話をするようにダム建設計画の愚痴を語りかけた。長話をしている間に脳石のシワに溜まった土や木の葉を取り除いてピカピカにしてやった。そして老人は心が少しすっきりし村へ帰っていった。
次の日村の者達はとんでもない轟音で目が覚めた。外を見ると山が巨人のように人型に立ち上がり村一帯を手のひらに乗せどこかにドシンドシンと歩いていた。村の者たちはしばらく騒然としたあとパニックになった。巨人の頭部の額には脳石が付いていてパニックになっている村の者たちに巨人は語りかけた。
「ダムから離れたところに運ぶっす」
山の巨人はものすごい笑顔でサムズアップした。