ユイ

「げっ!」
左耳のイヤホンが聴こえなかった。そういえばさっき何気なくクセでイヤホンをブンブン振り回していたことを思い出した。
「げー…高かったのに。」
俺は専らイヤホンは有線派だ。なにかワイヤレスより深みのある音が出るような気がする。
俺がしょんぼりしているとユイが断線したイヤホンを俺の手から取り、線を指でなにやらグリグリし始めた。
 「今念じてるねん。」
俺はポカーンとして呆れてしまい、音を出してYouTubeの新着の動画を見始めた。
俺がぽこプーの動画で爆笑していると
「ほら、治ったよ。」
とイヤホンを差し出してきた。俺は一応冗談に乗ってあげようとイヤホンをパソコンに挿し音楽を流した。すると驚いたことに本当に直っていた。
ユイは不思議ちゃんだ。付き合って3年、同棲して1年になるがまだよくわからないことがたくさんある。今回もたまたま線の接触の関係で一時的に直っただけだろうが、本気で自分の"超能力"だと信じているのか。そういうちょっと子供っぽいところが嫌で何度も別れ話になったがその度に寄りを戻している。ここまで来ると本当に運命の赤い糸で結ばれているのかもしれない。
──
ユイは泣き腫らした目を擦り大きな溜息をついた。LINEは既読スルーから未読スルーに変わっていた。落ち着くためSNSを眺めたが余計不安になった。またあれをやるしかなかった。ユイは空中から見えない糸をつまみ上げるように、グリグリ指の腹を擦り合わせ始めた。しばらく擦っているとピンポンが鳴った。高鳴る気持ちを押さえきれずドアを開けるとそのまま抱きついた。
この赤い糸、逃すわけにはいかない。

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