万事休す
カイルは短剣を宙に放り投げ、鉄仮面を脱ぎ捨てる。
膝から崩れ落ちる彼に、もはや策はない。万事休すか。
死を司る大剣が頭上に影を落とす、そのとき……影を落として…剣が…、その瞬間……。
私は二足のスリッパを片方に詰め、次々と一組にまとめていく。
濡れたスリッパは脇に除け、新しいものに取り替える。
この単調な流れ作業の間、カイルの頭上では、死の刃がぴたりと静止したままだ。
何か、彼を救う画期的な策はないか。
十二組目のスリッパを手に取ったとき、閃きが脳を突き抜けた。これだ。
早く作業を終わらせて、このアイディアをメモしなければ。
だが、十五組目を詰めているとき、指先に嫌な感触が引っかかった。
「きゃあっ!」
思わず声が漏れる。スリッパの奥には、ぐしょぬれになったトイレットペーパーが詰め込まれていた。
ただの悪戯か、あるいは何かの嫌がらせか。
私は汚らしいそれを脇へ除け、新しいスリッパを補充して作業を再開した。
ようやく全ての靴を揃え終えたころ、私はカイルを救うはずだった策を、綺麗さっぱり忘れていることに気づく。
必死に思考の糸を辿るが、何も手繰り寄せられない。
苛立ちのまま、私は例の濡れたスリッパを洗濯機に叩きつけた。
「バンッ」と硬い音が響き、二足のスリッパは互いに背を向けるようにして転がった。
同時、カイルは大剣に切り裂かれた。
二つに分かたれた胴体が、音を立てて床に転がる。
断面を晒しながら、カイルは「やれやれ」と、他人事のように苦笑した。