珈琲

彼の下唇は右に少し歪んでいた。

彼が珈琲を啜ると必ずカップの下に茶色い輪ができた。

ある日彼は夢を見た。

彼は年を取っていた。家族に囲まれていた。まだ小さい孫もいる。やけに眠たい。命の終わりが近いと悟る。最期に珈琲が飲みたいと言った。差し出された珈琲を飲むとやはり口から垂れてしまった。そして眠たくなる。幸せな人生だった。

ここで目が覚める。

とりあえず珈琲を啜った。まだ現実と夢が混ざり合っているような気がした。テレビをつけると週末デートに行く予定の遊園地の話題がやっていた。彼はなんだか嬉しくなって夢のことなどすっかり忘れてしまった。

カップの下には天使の輪ができていた。

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