シュロの木
台風で宿泊客は僕以外にいるのか分からなかった。
季節外れの台風は猛烈な勢いで日本列島を縦断していた。
ロビーの半分は消灯していて、従業員が裏で座ってテレビを見ていた。各地の予想される雨量を伝えていた。
自室に戻った。部屋はやや薄暗く濡れた靴下などが散らかっていた。
無音だった。
風の音が完全に遮断され耳が耳の音で痛くなるような無音だった。テレビのリモコンを探したが見つからなかった。
部屋を出た。
廊下もやはり無音だった。窓からシュロの木が見えた。
シュロの木は風に殴られていた。葉が千切れ捻じれ揺さぶられ続けていた。
僕は無音の窓の内からそれを眺めていた。